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       理化学研究所  生命機能科学研究センター(2018年4月より)

     分子標的化学研究チーム

   RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research (BDR)

   Laboratory for Chemical Biology

Research

我々は化学の革新によるライブイメージングや創薬の大幅な加速を目指し、

以下の4つのテーマを柱にすえて研究を行っています。

なお、細谷グループの研究方針はこちらをご覧ください。

 

 

●[11C]/[18F]PETプローブの設計と合成 

 

生物活性分子の動態やその標的分子(タンパク質など)を理解する上で、PETイメージングは非常に有効な技術です。

陽電子を放出するPET核種はいくつかありますが、主に11Cと18Fがよく用いられています。これらの核種の半減期(11C = 20.4 min, 18F = 110 min)、PETプローブの合成においてはこれらの核種を合成終盤で、かつ迅速に導入する必要があります。また、PET核種の導入のために本来の化学構造に手を加える場合、元々の生物活性を損なわないよう設計する必要があります。さらに、PETイメージングのデータを効率よく得られるよう、場合によっては元々の分子の活性を意図的に変化させることもあります。これらの問題はPETイメージングに固有であり、このためPETプローブの設計と合成には科学的素養の他に技術と経験が求められます。我々は個々の生物活性分子に応じてこれらの問題を解決することで、有用なPETプローブの開発を行うとともに、PETイメージングを用いる生命科学研究が円滑に進むよう研究を行っています。

 

 

 

これまでスズ前駆体を用いた[11C]高速メチル化では、[11C]ヨードメタンのパラジウム(0)錯体によるトラップの後に前駆体を加えるという、二段階の工程が必要でした。これに対し、[11C]ヨードメタンのトラップを低温で行うことで、スズ前駆体存在下でも効率よく反応が進行することを見いだし、スズ前駆体を用いるone-potでの高速メチル化が可能となりました。この手法を用いて、抗ウイルス薬として知られるジドブジン、スタブジン、テルビブジンに対応するC-11標識PETプローブを効率よく合成することができました。また、これまで二段階の工程で合成していた[Me-11C]チミジンや[Me-11C]チオチミジンの合成にも適用可能であり、従来の2倍近い放射能を持つPETプローブを得ることができました。

“Efficient syntheses of [11C]zidovudine and its analogs by convenient one-pot palladium(0)–copper(I) co-mediated rapid C-[11C]methylation”

Zhouen Zhang*, Hisashi Doi, Hiroko Koyama, Yasuyoshi Watanabe and Masaaki Suzuki*

J.Labelled Compd. Radiopharm. 2014, 57, 540–549.

 

 

 

●PETプローブの効率的な合成法、及び合成戦略の開発

 

上述したように、PETプローブを開発するためには短い半減期を持つPET核種の導入法が不可欠です。これまでにRIKEN CMIS(CLSTの前組織)ではパラジウム触媒を用いるカップリング反応に基づく高速メチル化を開発し、様々なプローブ合成を達成しています。しかしPET核種の導入法(標識反応)の種類は限定されており、PETプローブの開発は今でも容易ではありません。我々はこの状況を、新しい高速反応の開発や合成戦略の刷新を図ることで克服しようと考えています。

 

生物活性分子の生体内での挙動の観察や、それに基づく生命現象の解明を行うには、元々の分子を化学的に改変し、可視化するための機能を付与する必要があります。これを可能にするアプローチとして、タンパク質や抗体のような大きな分子に、PET核種64Cuとこれに対応するキレーター分子(DOTA、NOTAなど)を付与することで、PETイメージングを行う例などが挙げられます。しかし、小分子と異なり無数の官能基と複雑な3次元構造を持つ高分子の化学修飾は、その位置選択性や活性部位の保持など課題が多く、容易ではありません。我々はこれらの問題を解決する化学的手法の開発を行っています。

 

●ケミカルバイオロジーのための化学技術や手法の開発

 

* * * 

以上に述べてきた課題の解決には、全く新しい化合物の創製、さらにはそれらの合成を実現する新反応の開発が不可欠です。我々は有機反応化学のあらゆる技術を駆使して、新しい結合形成を実現する反応や効率的な触媒反応の開発などを行っています。

 

“Generation of Arynes via Ate Complexes of Arylboronic Esters with an ortho-Leaving Group”
Y. Sumida, T. Kato, and T. Hosoya*, 
Org. Lett. 2013, 15, 2806–2809.

 

 

●有用な有機化合物の効率的合成法の開発

 

 

オルト位に良い脱離基(OTf)を有するアリールボロン酸エステルが優れたベンザイン前駆体となることを見いだしました。NMRモニタリングなどから、塩基を加えることによって形成されるホウ素アート錯体から室温付近で効率良くベンザインを生じていると考えられます。多彩なarynophileと反応できることに加え、前駆体が容易に合成出来ることから、これまでとは異なったベンザイン化学種の使い方が可能であると考えています

 

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